Galapagos Tech Blog

株式会社ガラパゴスのメンバーによる技術ブログです。

UIScrollViewのスクロール方向を扱いやすくしてみる

こんにちは、iOSチームの本柳です。

UIScrollViewのスクロールしている方向を取扱いたいことって割りとありますよね?

通常はscrollViewWillBeginDraggingでスクロール開始位置のcontentOffsetを保存しておいて、scrollViewDidScrollで現在のcontentOffsetと保存しておいたcontentOffsetを比較して方向を取るみたいなことをするかと思います*1

しかし、この方法、Viewにスクロール開始時の状態を増やしてしまったり、スクロール方向を決める処理の実装が煩雑だったりと個人的にあまり好きではありません。

今回は、別のアプローチでスクロール方向を取得する方法を考えてみました。

KVOを利用してcontentOffsetを監視する

ScrollViewがスクロールするとcontentOffsetが更新されます。

なので、contentOffsetを監視すればscrollDidScrollと同じようにスクロールした時というのを取得することが可能となります。

監視するための処理をextensionを利用してUIScrollViewに拡張しましょう。

extension ScrollDetectable where Self: UIScrollView {

    var scrollDetectableKeyPath: String { return "contentOffset" }

    /// contentOffsetの監視を始める
    func enableScrollDirectionDetect() {
        var _self = self
        _self.scrollObserved = true
        addObserver(self,
                    forKeyPath: scrollDetectableKeyPath,
                    options: [.new, .old],
                    context: nil)
    }

    /// contentOffsetの監視をやめる
    func disableScrollDirectionDetect() {
        if scrollObserved {
            var _self = self
            _self.scrollObserved = false
            removeObserver(self, forKeyPath: scrollDetectableKeyPath)
        }
    }

}

KVOを利用して監視を行うと、プロパティの変更前、変更後の値を取得出来るのでスクロールの開始位置を保存しておく必要がなくなります。

スクロール方向は型で欲しい

スクロール方向は型として取り扱いたいですよね?

ということでスクロール方向を型にしてみます。

// 横方向のスクロール状態
enum ScrollDirectionX { case none, lead, tail }

// 縦方向のスクロール状態
enum ScrollDirectionY { case none, top, bottom }

そういうケースがあるか分からないのですが、斜め方向へのスクロールのことも考慮して縦と横のスクロールで型を分けるようにしました。

スクロール方向をstructとして定義する

スクロール方向に関する情報は一つのオブジェクトとして取り扱えるとプログラムを書きやすいですよね。

struct ScrollDirection {

    /// 直前のcontentOffset
    let old: CGPoint

    /// 現在のcontentOffset
    let new: CGPoint

    /// 横スクロール方向
    var directionX: ScrollDirectionX {
        if old.x > new.x {
            return .lead
        } else if old.x < new.x {
            return .tail
        } else {
            return .none
        }
    }

    /// 縦スクロール方向
    var directionY: ScrollDirectionY {
        if old.y > new.y {
            return .top
        } else if old.y < new.y {
            return .bottom
        } else {
            return .none
        }
    }

    init(old: CGPoint, new: CGPoint) {
        self.old = old
        self.new = new
    }

}

イニシャライザで新旧のcontentOffsetを渡してあげるとdirectionYdirectionXからスクロール方向を取得できるようになります。

ScrollDirectionを生成するための処理を定義

最後にUIScrollViewを編集してスクロール方向を取得する処理を定義すれば完成です!

var scrollObserved: Bool = false

override func observeValue(forKeyPath keyPath: String?,
                           of object: Any?,
                           change: [NSKeyValueChangeKey : Any]?,
                           context: UnsafeMutableRawPointer?) {
    if keyPath == scrollDetectableKeyPath, let _change = change {
        guard
            let old = (_change[.oldKey] as? NSValue)?.cgPointValue,
            let new = (_change[.newKey] as? NSValue)?.cgPointValue else {
            fatalError("Undefined KVO key.")
        }

        let direction = ScrollDirection(old: old, new: new)
        print(direction.directionY)
        print(direction.directionX)
    }
}

適当なタイミングで、enableScrollDirectionDetectdisableScrollDirectionDetectを呼び出してあげればいい感じにスクロール方向を取得出来るようになります。


ということで、スクロール方向をいい感じに取得する方法を考えてみました。

なんだかもっといい方法がありそうなのですけどね(^_^;)

ということで、ガラパゴスではもっといい方法でiOSプログラムを書いていける!という腕自慢のエンジニアを絶賛募集中です!

www.glpgs.com

たくさんのご応募お待ちしております。

*1:良い 方法をご存知の方は是非教えて下さい!

PhoenixでElmしてみる

ご機嫌よう、奢侈文弱なガラパゴスのおとめです。

ガラパゴスでは社内勉強会というものが毎週開催されているのですが、その席で、Elm推しのナイスミドルで格好いい本柳さんが「PhoenixとElm連携できます(`・ω・´)キリッ」と発表されていましたので、今回はそれを試してみます。

この記事はPhoenix Framework 1.3-rc.1を対象にしています。1.2以前はディレクトリ構造などが異なります。また、PhoenixやElmのインストールなどは済んでいるものとします。

$ iex -v
Erlang/OTP 19 [erts-8.3] [source-d5c06c6] [64-bit] [async-threads:10] [hipe] [kernel-poll:false]

IEx 1.4.1
$ mix phx.new -v
Phoenix v1.3.0-rc.1
$ node -v
v6.10.3
$ elm -v
0.18.0

おさらい:Phoenix FrameworkとElm

もちろんこのblogをご覧の皆様には説明の必要などないと思われますが、Phoenix Frameworkは、RailsErlangのいいとこ取りをしようといったWebフレームワークで(1.3でRails Wayとは一線を画す素敵な方向に進んだことはこのblogでも触れました)、一方のElmは乱立するAltJSの戦いで瀕死のフロントエンドエンジニアにもたらされた希望です。

因みにですが、PhoenixのデフォルトではフロントエンドにはES6が使われます。

まとめ

いきなりですがまとめますと、Phoenix Frameworkで使用しているbrunchにElm対応の拡張を入れると、それだけでフロントエンドはElmで書くことができます。ほら、簡単でしょう?

アセット管理のおはなし

簡単でしょう? ……??

何を言っているのかちょっと意味がわかりませんね。Elm対応の拡張を入れる? なに言うてはりますのん?

その前にbrunchについてお話ししましょう。brunchはフロントエンドのビルドツールで、Phoenixではデフォルトのアセット管理ツールとして採用されています。アセットというのはJavascriptCSSなど、Viewのナカミのように動的に生成されるわけではないリソースのことですが、例えばLESSやSCSSで書いたものはCSSコンパイルしたり、Javascriptはサイズを圧縮したりしますね? そういったことを行うためのツールです。行うと言っても実際には意識することはほとんどなくて、アプリケーションの実行時にフレームワークがよしなにそういうことをしてくれるのですが。

さて、ここまでのおはなしで、諸兄諸姉にはもう、アセットというものは静的で、変更後一回だけ生成すればよく、しかしその一回は確実に実行されなければならない、ということがお分かりかと思います。

ところで、例えばES6ならイマドキのモダンなブラウザなら普通に使うことができます−−できるはずですね?−−が、Elmの場合はJavascriptに変換する必要も出てきます。トランスパイルですね。もちろん、Elmで書いて手動でトランスパイルして、出てきたJavascriptをbrunch(などのビルドツール)で使う、ということもできますが、面倒じゃなくてですか? もしも万が一手順書のようなものに従って何かするとしたら、トランスパイルしたり、そうして出力されたファイルを決まった場所にコピーしたり、といった「手順」はいかにも省略されそうじゃなくてですか? 人が行うなら、確実に実行される、という要求を満たせそうにありません。

そんなわけですので、ソースツリー上では普通にElmを書いて、トランスパイル以下略などは自動的によろしくして頂きたいですね。

elm-brunchを使ってみる

もちろんシェルスクリプトなどを書いてCIに組み込んでも良いのですが(それはそれでローカルデバッグの時面倒そうですが)、もっと朗報があります。Elmに対応したツールを使えば良いのです。はじめの方でお話ししたように、brunchにElm対応の拡張を入れましょう。

ここにelm-brunchがありんす。早速インストールしましょう。

$ npm install --save-dev elm-brunch

Phoenixプロジェクト上にElmのためのフォルダを作って関連するパッケージをインストールします。

$ mkdir assets/elm
$ cd assets/elm
$ elm package install elm-lang/html

せっかくelmディレクトリにいることですし、早速Elmを書いていきましょう(テキストに「ご機嫌よう世界」と出力するだけの簡単なものです)。この時、App.elmというファイル名にすると、トランスパイルして出力されたファイルが既存のapp.jsを上書きしてしまうので注意しましょう。今回はElmApp.elmという名前にしてみました。

module ElmApp exposing (..)

import Html exposing (Html, text)

main : Html msg
main =
  text "ご機嫌よう世界"

さて、もちろん現時点ではまだbrunchの設定などは行なっていませんので、このままではトランスパイルなどは自動では行われません。そこで、brunchの設定をします。

まず、assets/brunch-config.jsに、elm-brunchに関する設定を書きます。brunchが監視しているフォルダに"elm"を追加するのもお忘れなく。

elmBrunchの設定でelmFolderを指定する設定方法をよく見るのですが、それでは動かなかったので、ここではmainModulesでパスも指定しています。

...
  paths: {
    // Dependencies and current project directories to watch
    watched: ["static", "css", "js", "vendor", "elm"],
    // Where to compile files to
    public: "../priv/static"
  },

  // Configure your plugins
  plugins: {
    elmBrunch: {
      mainModules: ["elm/ElmApp.elm"],
      outputFolder: "../assets/js",
      makeParameters: ["--debug"]
    },
    babel: {
      // Do not use ES6 compiler in vendor code
      ignore: [/vendor/]
    }
  },
...

依存関係にもElm関連を指定する必要がありますので、assets/package.jsonに追加します。

...
  "devDependencies": {
    "babel-brunch": "6.0.6",
    "brunch": "2.10.7",
    "elm": "^0.18.0",
    "elm-brunch": "~0.8.0",
    "clean-css-brunch": "2.10.0",
    "css-brunch": "2.10.0",
    "uglify-js-brunch": "2.1.1"
  }
...

この段階で、一旦アセットパイプラインを動かして、Elmがトランスパイルされることを確認してみましょう。Phoenixでbrunchなアセットパイプラインを手動で実行するには以下のようにします。問題がなければ、このように完了メッセージが表示されるはずです。

$ node node_modules/brunch/bin/brunch build
14:56:35 - info: compiled 66 files into 2 files, copied 3 in 2.8 sec
Elm compile: elm/ElmApp.elm, to ../assets/js/elmapp.js

ところで先ほど書いたElmApp.elmはどこでどう動くのでしょう?

assets/brunch-config.jsに、outputFolder: "../assets/js"と書きました。これは、トランスパイルしたファイルの出力先の指定になります。アセットパイプラインを実行した際のコンソールログからもこのことはお分かりいただけますね? でも、このままではアプリケーションにロードされませんので、どこかに書く必要があります。

どこかに……?

ElmApp.elmは、単に「ご機嫌よう世界」と出力するだけなのを思い出してください。とりあえず適当な要素にでも出してみましょう。

というわけで、elmというIDの要素に出力してみます。assets/js/app.jsにElmAppを使います的な感じで、要素を書き換えるJavascriptを記述します。

...
import "phoenix_html"
import Elm from "./elmapp.js"
...
const elmElement = document.querySelector("#elm")
const elmApp = Elm.ElmApp.embed(elmElement)

次に、出力先の要素を適当に用意します。プロジェクトを作ったばかりの場合はインデックスページ(lib/YOUR_APP_NAME/web/templates/page/index.html.eex)しかありませんが、ここに追加してしまいましょう。

...
  <div id="elm"></div>
...

ではサーバを起動してみます。

$ mix phx.server

するとこのように、無事にご機嫌よう世界できました。

f:id:glpgsinc:20170517153955p:plain

elmapp.jsがありません、というようなエラーになる場合は、app.jsの該当の行を一旦コメントアウトしてアセットパイプラインを実行してください。これは、elmのトランスパイルがjsのコンパイルよりも後に行われることで発生します。一度トランスパイルしてしまえば大丈夫です。トランスパイルを必ず先に行うこともできると思うのですが、この記事ではそこまで突っ込みません

さいごに

突然ですがガラパゴスではサーバーサイドエンジニアを募集していますガラパゴスで実際にPhoenix Frameworkを採用したプロジェクトはまだ一つしかありませんが、推しを共有できる仲間が欲しいですのん、というわけで興味がおありの方は是非に。皆さまの応募お待ちしています。

では、ご機嫌よう。

この記事は業務の一環として業務時間中に書きました

SwiftでもElmのようなパーサーコンビネータを利用できるようにしてみました。

こんにちは、iOS開発チームの本柳です。

コードのモジュール化について色々考えながら開発していたのですが、 あれこれ考えているうちに勢い余ってgalapagos/HighOrderHelperというライブラリを作ってしまいました。

galapagos/HighOrderHelper ?

このライブラリはElmがコア機能として提供しているHigh-Order Helpersという機能をSwiftに移植したものです*1

galapagos/HighOrderHelperはパイプラインオペレーターや関数合成オペレーター、他に関数を変形するための関数などを含む関数プログラミングを行うための手助けとなるような機能を含んでいます。

このライブラリの機能の一部を紹介しましょう。

パイプラインオペレーター

F#から生まれ、OCamlOSS界に降臨し*2、Elixirに採用されたことでWEB界隈に認知され、その後WEBの力で急速に開発者に浸透していったオペレーター|>です。

Elmでは。Forward apply(|>)、Backward apply(<|)という二種類のパイプラインオペレータがありますが、galapagos/HighOrderHelperを利用すると、これらをSwiftで利用出来るようになります。

このパイプラインオペレーターを利用すると、下記のようにコードを書くことが出来るようになります。

// パイプラインオペレータを使う雰囲気だけご覧頂くためのコード(実際にこのコードが動作するわけではない)
let entity = JSONString
                 |> JSON.parse
                 |> Entity.map

このオペレーターを利用するためには参照透過な関数を用意する必要がありますので、積極的に利用していく結果的に副作用のある処理が少なくなっていくのが嬉しいですよね。

ヘルパ関数

galapagos/HighOrderHelperは提供するオペレーターを利用しやすくするために幾つかのヘルパ関数を用意しています。

ここではflip関数をご紹介します。

以下のような関数があるとします。

func A() -> String {
    return "a"
}

func B(_ a: Int, _ b: String) -> String {
    return "\(a)-\(b)"
}

この時、A() |> (B, 1)のようなコードを書きたいのですが、型が合わないために書くことが出来ません。

flip関数は関数の第一引数と第二引数を入れ替えた関数を返す関数です。

この関数を利用するとA() |> (flip(B), 1)というように書くことが出来るようになります。

このような感じで、ヘルパ関数を利用すると様々なケースにgalapagos/HighOrderHelperは提供するオペレーターを利用出来るようになります*3


galapagos/HighOrderHelperの機能をちょろっとご紹介しました。

詳細はGithubに記載してあるので、興味のある方は是非御覧ください。

さて、ガラパゴスでは勢い余ってライブラリを書いてしまうようなアクティブなエンジニアを募集しております。

ご興味お持ちの方は是非、弊社の採用ページを御覧ください。

www.glpgs.com

たくさんのご応募お待ちしております。


*1:この手のライブラリは何番煎じなんだ?という気もするのですが、Elm Likeという点においてはこいつが初版のはず

*2:実のところOCamlOSS界隈に降臨したかどうかは知りませんので、詳しい方は教えてください

*3:これが、パズルを解いているような感じで楽しいのです!